ナレッジマネジメントとは?基礎知識や導入方法4ステップを徹底解説

ナレッジマネジメントとは?基礎知識や導入方法4ステップを徹底解説

近年、社員が持つ知識やノウハウを組織で共有する「ナレッジマネジメント」という経営手法が注目されています。皆さんの中には、「情報共有の大切さは分かるけど、具体的にどうすれば良いのか分からない」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

本記事では、ナレッジマネジメントの定義や代表的な手法、導入の手順について詳しく解説します。

ナレッジマネジメントとは

ナレッジマネジメントの「ナレッジ(knowledge)」とは、知識や経験、ノウハウなどを意味します。ナレッジマネジメントは、社員のナレッジを企業全体で共有することで、生産性や競争力を向上しようという経営手法のことです。

ナレッジマネジメントが注目される背景

近年ナレッジマネジメントが注目される背景には、雇用の流動化や顧客ニーズの多様化があります。終身雇用が当たり前だった時代には、長い時間をかけて社員を育成していたため、知識や経験は自然に蓄積されるものでした。

しかし、最近では短いスパンで転職する人も多く、顧客のニーズも多様化してきたため、情報を蓄積・共有するための仕組みが必要になってきたのです。

ナレッジマネジメントの基本的な考え方

ナレッジマネジメントを理解するうえで重要なのが、「暗黙知」と「形式知」という考え方です。それぞれ、次のようなものを意味します。

  • 暗黙知:個人が持つ知識や経験のうち、言葉や数値にしてあらわしにくいもの。長年の勘や暗黙のルールなど。
  • 形式知:個人が持つ知識や経験のうち、言葉や数値で表現できるもの。規則やマニュアルなど。

ナレッジマネジメントにおいては、暗黙知をいかに形式知に変換し、組織内で共有・活用できるかが成功のカギになります。

代表的な手法「SECIモデル」

ナレッジマネジメントの代表的な手法として、「SECI(セキ)モデル」と呼ばれるものがあります。SECIモデルの「SECI」は、それぞれ次の単語の頭文字を表しています。

  • Socialization(共同化):同じ体験を通して個人の暗黙知を伝達し、理解すること。OJTや営業同行など。
  • Externalization(表出化):暗黙知を形式知に変換すること。ミーティングやマニュアル作成など。
  • Combination(連結化):新しい形式知と既存の形式知を連結させ、大きな知識体系を作ること。データベース化やネットワーク化など。
  • Internalization(内面化):新しい形式知を個人が取り込み、暗黙知として自分のものにすること。実践や反復など。

SECIモデルでは、暗黙知を形式知に変換するためには、共同化・表出化・連結化・内面化という4つのプロセスがあると考えます。一度内面化した形式知は、また共同化から繰り返すことで、より高度なナレッジになるというスパイラル構造をしているのが特徴です。

ナレッジマネジメントを導入するメリット

企業がナレッジマネジメントを導入すると、次のようなメリットがあります。

  • 業務効率化
  • 組織力の強化
  • 顧客満足度の向上

それぞれ詳しく見てみましょう。

業務効率化

ナレッジマネジメントを導入すると、業務を効率化できるのがメリットです。個人が持つ知識や経験を組織で共有すれば、失敗やムダな試行錯誤をすることなく、最短距離で成果が挙げられます。

組織力の強化

ナレッジマネジメントは、組織力の強化にもつながります。業務に必要な知識やノウハウが共有されていれば、急な欠勤や退職が発生した場合に「あの人がいないと分からない」ということがありません。

また、特定の人に業務負荷が集中してしまったときにも、チームで業務を再分配して、速やかに対応できるようになります。

顧客満足度の向上

ナレッジマネジメントを導入すると、顧客満足度の向上も期待できます。組織には必ずベテラン社員や新入社員、優秀な社員とそうでない社員が混在するものです。

皆さんも日常生活で、「担当者が新人で対応に時間がかかった」「サービスの質が低かった」という経験があるのではないでしょうか。

ナレッジマネジメントができていると、どの社員が担当しても一定以上のクオリティでサービスを提供できるようになります。

ナレッジマネジメントの導入4ステップ

ここからは、ナレッジマネジメントを導入する手順について解説します。ナレッジマネジメントの導入は、次の4つのステップに分けて進めるのがおすすめです。

  1. 目的を明確にする
  2. 共有するナレッジ(知識・経験)を選定する
  3. 共有・蓄積する方法を決める
  4. 定期的に見直す

はじめに、ナレッジマネジメントを導入する目的を明確にします。目的は全社員にもきちんと説明し、共通認識を持つことが大切です。

次に、どのような知識・経験を共有するのかを選定します。例えば「営業成績が良い社員のトークスクリプト」や「クレームの事例と対処法」、「よくある質問と回答」などです。

共有するナレッジが決まったら、データを共有・蓄積する方法を決めましょう。また、実際に運用が始まった後も、定期的に効果や使い勝手を検証して、ブラッシュアップしていくことが重要です。

ナレッジマネジメントを導入する際の注意点

ナレッジマネジメントを導入する際は、次のような点に注意しましょう。

  • ツールを活用する
  • 評価制度を決めておく
  • マニュアルに頼り過ぎない

以下で詳しく解説します。

ツールを活用する

知識やノウハウを共有・蓄積するためには、専用のITツールを活用するのがおすすめです。エクセルのような表計算ソフトでもナレッジの管理はできますが、複数の人が同時に編集したり、必要な情報を素早く検索したりするのには、不便な面があります。

専用のITツールなら権限管理やチャットなど、さまざまな機能がついているものもあるので、自社に合ったものを選ぶようにしましょう。導入したツールを最大限に活用するためには、業務プロセスに組み込んでしまうことが有効です。

評価制度を決めておく

ナレッジマネジメントを導入する際は、評価制度を整えておくことも大切です。

ベテラン社員の中には、自分が苦労して身につけた知識やノウハウを共有することに抵抗を感じる人もいます。また、ただでさえ業務が忙しい中で、マニュアルを作成したり後輩に教えたりしていると、その間は自分の仕事が滞ってしまいます。

情報を提供する側に不満を感じさせないためにも、ナレッジマネジメントに取り組むメリットや評価基準を設けておきましょう。

マニュアルに頼り過ぎない

ナレッジマネジメントを導入すると、マニュアルが充実する一方で、自分の頭で考える機会が減ってしまうというリスクがあります。何でも答えがすぐに分かり、言われた通りにやれば良い、という癖がついてしまうと、若手社員はなかなか成長できません。

まずは自分の頭で考えてから、マニュアルをうまく活用するというように、バランスをとることが大切です。

まとめ

ナレッジマネジメントは、雇用の流動化やニーズの多様化に対応するために有効な経営手法です。導入することで、業務効率化や組織力の強化、顧客満足度の向上などが期待できます。

ナレッジマネジメントを成功させるためには、ITツールの活用や評価制度の整備などを進めることも大切です。現場の意見も取り入れながら、組織一丸となってナレッジマネジメントに取り組みましょう。