新たな調味料や食材で市場にブームを巻き起こしたり、健康食品市場のような著しい成長を見せる市場があったりと、時代に合わせてめまぐるしく変化がみられるのが食品業界。しかしながら、業界の特徴としては比較的保守的な傾向があり、堅実でコツコツ仕事をこなせる人に向いている業界です。経験者だけでなく未経験者にも転職のチャンスがある業界ですが、転職活動をする際はそれぞれに注意点があります。本記事では、食品業界の中でも食品メーカーの職種や転職活動前に知っておきたい業界の特徴・注意点について、食品業界の転職現場の実情に精通している、業界特化型のコンサルタントが紹介します。
食品メーカーの職種
研究・開発
研究・開発部署は、商品作りに携わる部署です。原材料、添加物の選定や研究、研究結果を踏まえた新製品の開発、既存商品の改良などを行います。自身の研究を追求できる研究所の研究者とは異なり、売り物に繋がる研究を求められます。営業やマーケティングに携わるメンバーとコミュニケーションを取って開発を進めることもあり、ある程度円滑なコミュニケーション力も必要です。
品質管理
品質管理は、製品を作る段階で「どうすれば不良品をつくらないか」などを考え、生産ラインや従業員の衛生管理を行い、品質不良を発生させないことが仕事です。未然に不良品の発生を防ぐことは重要であり分析力や責任感を必要とします。
品質保証
品質保証は、作られた製品の安全性を担保する重要な役割を担っています。製品の品質を管理したり、また販売後に不良品が発生した場合の問い合わせにも対応しますので、その後の品質改善にもかかわっていきます。
営業
食品メーカーの営業職の営業先は、食品卸会社やスーパーマーケット、小売店、外食産業など幅が広く、扱っている製品によって営業先が変わります。新規開拓が中心となる会社もあれば、顧客中心のルート営業が主な営業となる会社もあります。営業先から聞いてきた製品への要望を研究開発部署のメンバーに伝え、より良い商品開発に携わることもありますよ。
マーケティング/商品企画
売れる商品の開発には、マーケティングが必須です。市場調査の他、実店舗やECサイトなど販売チャネルの開発・検討、実際の売上データの分析など、予測と分析を繰り返す仕事です。
食品メーカーへの転職は未経験だと難しい!?
食品メーカーへの転職は、未経験でも可能です。ただし、未経験スタートでの採用は若手に限られる傾向があります。理由は、食品メーカーのカラー。食品メーカーは、複数社を渡り歩いて経験やスキルを身に着けるというよりは、できるだけ一社で長く働くことで経験を積み重ねていくスタイルが中心だからです。もちろん培った経験を次に活かすため、転職を選ぶ方もいらっしゃいますが、ある程度の経験を積み重ねた上での選択肢となります。そのため、業界カラーを受け、中堅層以上の中途採用では、即戦力足り得る経験値を持った経験者が求められる傾向があります。
なお、研究開発や品質保証等、理系知識を求められる職種も多く、未経験者の場合であっても理系知識が応募条件となっている会社が多いのも特徴です。
技術職は食品メーカー未経験でも経験が活かせる
技術職経験者の場合、食品メーカーでの勤務経験はなくとも、これまで培ってきた経験を活かして働ける職種もあります。基本的な技術を身に着けられていれば、食品メーカーでの仕事に応用できるケースがあるためです。役立てられる可能性のある経験を持っている方は、書類選考や面接で、過去の経験をしっかり伝えることが大切です。
食品メーカーへの転職前に知っておきたい業界の特色と注意点
食品メーカーへの転職で知っておきたい特色は、以下の3つです。
1.スピード感を持って成長できる
食品業界は、トレンドの移り変わりが非常に速いのが特徴です。そのため、新商品の開発スピードもおのずと速くなります。スピード感を持って経験を蓄積していけるため、成長速度も速くなります。
2.不況に強い安定性が強み
食は、人が生きていくために必ず必要なものです。そのため、不況など外的要因から受ける影響に強く、安定性があります。
3.日々の生活でやりがい・達成感が味わえる
スーパーマーケットなど、小売店に卸す商品を扱っている食品メーカーの場合、携わった自社製品が陳列されている様子を目にできる機会に恵まれやすいのが特徴です。SNSの流行により、話題商品や人気商品は消費者の投稿により生の声を見かけることも増えました。やりがいや達成感が味わえる瞬間がたくさんあるのも、食品メーカーの良さのひとつです。
食品メーカーへの転職を検討する際、注意したい点は以下の3点です。
入社後のギャップ防止のためにも、事前に知っておきましょう。
1.「複数社で経験を積む」より「一社で長く」が好まれます
未経験入社を若手に限る傾向があると紹介したところでも述べたとおり、食品メーカーが好むのは、一社で長く勤めながら着実に経験を積み上げていくスタイルです。時代と共に、転職を重ねキャリアを構築するスタイルも増えてきましたが、食品メーカーの場合はそうではないと知っておきましょう。
2.「インセンティブでガツガツいきたい!」より「堅実・実直・誠実」な業界です
業界によっては、「結果を出せば、がっつり稼げる」歩合制、インセンティブが一般的になっています。特に営業職は数字で結果を明らかにしやすい特性上、「結果を出せば稼げる」傾向が強い仕事のひとつです。
しかし、食品メーカーの業界カラーは「堅実・実直・誠実」です。数字を出すことを最優先にして大きな変化を巻き起こす仕事よりも、一社一社と丁寧に向き合いコツコツ真面目に仕事ができる人が求められます。
3.食品メーカー経験者だからこそ注意したい「用語」使い
未経験だけではなく、経験者の転職ももちろん可能です。前職での経験を活かして働くことができるでしょう。
しかし、経験者の転職には、未経験者とは異なる注意点があります。それは、用語使いです。自社で当たり前のように使っていた用語は、業界共通の用語ではありません。あなたが当然のように知っている用語は、転職希望先の企業にとっては知らない用語であるケースも多いのです。
また、過去の実績を提示する際の商品名の扱いにも注意しましょう。市場で広く知られる商品名だからといって、転職希望先の面接担当者が知っているとは限らないためです。
例として、前職で結果を出した商品名を堂々と面接で語ったにも関わらず、面接担当者が肝心の商品名を知らなかった、といったケースがありました。「ヒット商品だから知っているはず」と思いこまず、丁寧に説明するように心がけたいものですね。
食品メーカーの給与相場
転職を検討する際に、気になる情報のひとつは給与相場ではないでしょうか。
食品メーカーの転職時の給与相場の目安は、以下の通りです。
20代:350~420万円
30代:450~530万円
40代:560~630万円
他業界と比べ、大幅に高いといった特徴はありません。業界カラーである「堅実」は給与面にも該当し、堅実にコツコツ成果を上げていくことで昇給していく傾向にあります。
転職前に業界カラーの理解が重要!適性を見極めて入社後のギャップに備えましょう
食品メーカーが好むのは、実直にコツコツしっかり働ける、例えるならば学生時代に優等生タイプだった人、「真面目だね」と評されてきたような人です。無理に背伸びをしたり尖らせたりする必要はありません。入社前にお互いの全てを確認し合うことはできませんが、少なくとも業界カラーを理解しておくことで入社後のギャップを少なくすることはできます。入社してからこんなはずじゃなかった!とならないために事前に業界カラーを知っておきましょう。